パーソナルゲノムの高次構造に基づくアルツハイマー病発症病態の解析

研究代表者:桑野良三 新潟大学脳研究所
分担研究者:柿田明美 新潟大学脳研究所
連携研究者:宮下哲典 新潟大学脳研究所

人類始まって以来の高齢社会を迎え、これまで経験したことのない加齢性疾患と向き合うことになった。70歳代を発症ピークとするアルツハイマー病の病因究明は、迫り来る団塊世代の高齢化を考えると緊急課題である。

アルツハイマー病も多くの神経疾患と同じく、家族性の単一遺伝子病と圧倒的多数を占める孤発性に分けられる。孤発性アルツハイマー病も遺伝的な要因が関与し、その遺伝率は58%〜79%と推計されている。これまでに1348研究で662の感受性遺伝子の報告がある(http://www.alzgene.org/)。最も強力なリスク遺伝子としてApolipoprotein E (APOE)が認められている。しかし、λs>λAPOEであること、疫学をベースとした統計から、APOEに匹敵する発症を早める感受性遺伝子がまだ4〜7個は存在するとされている。アルツハイマー病の国際的な大規模GWAS (Genome-Wide Association Study)研究にもかかわらず、APOEに匹敵する疾患関連遺伝子はまだ見出されていない。これらは比較的頻度の高いSNPを用いたため、理論的に強いリスクの発見は不可能かもしれない。

本研究では、家族内多発家系または同胞発症を主たる対象として、パーソナルシークエンスによる徹底したrare variants、CNV、indel等の包括的ゲノム情報を取得する。研究項目A01および A03と連携して超大量データの処理を行い、アルツハイマー病の疾患関連領域を同定する。得られたゲノム領域を大規模孤発例に拡大して検証する。また、前向きコホート研究における個人ごとの臨床診断、生化学検査、心理学検査、脳画像診断等の詳細な病型分類がパーソナルゲノムとどのように関連するかを追求し、アルツハイマー病の発症と進行を理解する。研究期間の後半に、神経病理学的に診断された凍結脳を用いてアルツハイマー病病巣の進展に関する遺伝子発現解析、DNAメチル化状態、ゲノム間相互作用を明らかにする。これらのパーソナルゲノムの高次構造解析を基盤にアルツハイマー病の発症病態を解明し,新しい分子作用点から治療法開発研究の基盤構築の実現をめざす。